酒は百薬の長？

　もちろん、薬だからどれだけ飲んでも、良いなどという

ことはない。どんな薬も適量を守らないと、毒になる。酒

も同じ。

　どんな統計を見ても大酒は死亡率を高め、早死にの原因

の一つになっている。

　ところが、ちょっとビックリすることに、酒をぜんぜん

飲まない人たちより、少量、たしなむ程度に飲む人たちの

方が、寿命が長いという統計的なデータがあり、どうも少

量のお酒は長寿に繋がる力を秘めているようである。

　ちょっと資料的には古いが、アメリカカリフォルニア州

の言うなれば郊外住宅地にあたるアラメダ郡で１９６５年

に第一回の調査が行われ、９年後約７０００人の調査対象

者を追跡調査した結果から、お酒に関する項目では、まっ

たく飲まない人よりも、ちょっと飲む人の方が長生きする

という統計的データがあり、その後の各種調査でも同じデ

ータが得られているようである。

　まあ、統計も取り方が色々あり、飲まない人の方が、少

量といえども飲むという人より、健康にいいというデータ

を出している調査も最近ではあるが、調査対象をアトラン

ダムでなくある程度絞っており、統計的には少し違和感が

私にはある。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　一概には言えないが、日本酒なら１～２合、ビールなら

大瓶１本、ワイングラスならば２杯、焼酎（２５°）なら

０．５合程度までを適量と考えた時、“酒は百薬の長”と

もなるようである。

　酒量に関しては多くて日本酒なら３合までとか、日本酒

１合、ビールなら中瓶１本とか、色々言われているが、あ

くまでもたしなむ程度の話で、多飲酒は健康を害すること

は言うまでもない。

　では、少量のお酒はどのような健康効果があると言われ

ているか。

　まず、良く言われているのが、善玉コレステロールのＨ

ＤＬを増やすということ。悪玉コレステロールのＬＤＬを

増やすことなく、このＨＤＬを増やすことは普通のことで

はなかなか難しいが、薬以外では適度の有酸素運動。そし

てメカニズムはまだ分かっていないが、この少量のお酒。

貴重な効果であると言える。

　もう一つ言われているのが、少量のお酒は循環器の病気

を予防する効果があるということ。

　フランスでは赤ワインがよく飲まれており、周辺の国々

より心筋梗塞が少ないことが研究のスタート。ワインをグ

ラス２杯ほど飲んでいると、確かに心筋梗塞で亡くなるリ

スクが減少する結果が出ているという。

　赤ワインが抗酸化物質のポリフェノールを多く含んでい

ることから、赤ワインの作用と考えられがちだったが、ビ

ールでも、日本酒でも、いわゆるお酒なら、少量をたしな

む人には同じように心筋梗塞を減らす効果が表れており、

お酒自体の効用といえそうである。

　1981年にイギリスのマーモット博士が発表した、全く飲

まない人より適量のお酒を飲んでいる人の方が死亡率が低

く、逆に摂取量が多い人では死亡率が上昇するという「飲

酒と死亡率のJカーブ効果」という疫学調査、その後米国

保健科学協議会が1993年にＪカーブの効果を検証した調査

結果も、“酒は百薬の長”を示していると言えよう。

　
　

　

　

　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　